あなたの力が求められている!誤嚥性肺炎予防での歯科衛生士の役割!
歯科衛生士の皆さんは、日本の高齢化の速度が世界でも他にないほどのスピードで進んでいることはご存じでしょうか?
その中でも、誤嚥性肺炎で死亡する方の数はかなり多くなっています。
令和3年6月の人口動態調査では人口10万人に対して誤嚥性肺炎で亡くなる方は3,599人と、前年(2,999人)と比べて約600人も増加しています。
誤嚥性肺炎は特に高齢者での発症が多いのが特徴です。
そして誤嚥性肺炎には口腔内の環境が大きく影響しています。
国や医療のあり方の変化で、多くの方が地域で生活するようになった今、歯科衛生士による口腔ケアと家族、他の医療者との連携は患者さんの生命のみならず、生活そのものを向上させるために不可欠であると言えるのです。
今回は誤嚥性肺炎を予防するために、歯科衛生士に求められている役割を考えていきます。
歯科衛生士による専門的口腔ケア
近年、8020運動の達成者が50%を超えています。
とても素晴らしいことではあるのですが、その中には虫歯(う蝕)が進行している残存歯や重度の歯周病も含まれています。
この他にも、インプラントや義歯の装着、開閉障害による口腔内の乾燥などあらゆる問題が起こってきます。このような状態は口腔内の細菌の繁殖を促進してしまい、誤嚥性肺炎のリスクを高めてしまいます。
歯科衛生士の専門的知識や技術は、加齢や病気によって複雑化しやすい高齢者の口腔内の環境を可能な限り正常な状態に近づけるためには不可欠であると言えるのです。
歯科衛生士による家族や看護師への指導
加齢や病気の発症に伴って、自分で歯を磨いたりケアしたりできなくなる方は多くなります。
そのため、家族や訪問看護師によって口腔ケアが行われる機会というのも増えていく傾向にあります。
しかし、家族や看護師も口腔ケアの専門家でもなく、口腔内の状態を観察するという点においては、歯科衛生士の方が専門性を発揮できます。口腔ケアは1回ではなく、継続して行っていくことが何よりも大事です。
日々の手入れがきちんと行われてこそ誤嚥性肺炎を予防でき、食事を楽しむ期間も伸ばすことができるのです。
そのためには家族や訪問看護師への口腔ケアに関する知識の提供や方法の指導というのは必須になってきます。
定期的な歯科医師の診察をしつつ、家族や他の医療者にその時の状態に合わせたケアの方法を提案し、指導していくことは歯科衛生士にとって重要な役割です。
食事の楽しみへの貢献
口腔内の衛生環境を良くすることは、嚥下の機能を低下させないことにもつながります。
どんな年齢になっても食事の楽しみというのはあるものです。
しかし、飲み込めない状態になってしまったら、食事をすることは残念ながら難しくなります。
歯が機能しない、舌がうまく使えない、唾液がうまく分泌できない…。様々な問題を抱えやすい高齢者の嚥下の状態を確認するためにも、歯科衛生士の観察スキルは必須のものとなります。
また、家族から最近の様子を伺うことも非常に重要なスキルであり、クリニックや病院での経験はとても役立ちます。誤嚥性肺炎を予防するのみならず、食事の楽しみをずっと感じていられるようになるためにも、早期からの歯科衛生士の介入は不可欠です。
訪問診療にチャレンジしてみよう!
歯科訪問診療に対しては平成30年の診療報酬の改定によって、追い風が吹いています。
現状では、訪問診療を実際に行っているところはまだまだ多くはありませんが、今後さらに拡大していく分野です。
歯科衛生士の役割は、診療の場所の拡大に伴ってどんどんと広がっていくこととなるでしょう。
ぜひ興味のある方は歯科訪問診療の場に積極的に飛び込んでみてください。きっとあなたの力が必要になりますよ!